特定非営利活動法人 Human & Animal Bridging Research Organization エイチ・エー・ビー研究機構

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理事長挨拶

理事長挨拶

HAB研究機構理事長就任挨拶

HAB研究機構理事長
寺岡 慧

このたび当研究機構の理事長を拝命致しました。この機会をお借りしてひとことご挨拶申し上げます。当研究機構は1994年にHAB協議会として設立され、宍戸 亮初代会長、次いで佐藤 哲男第二代会長、さらに雨宮 浩第三代会長のもとでその基礎を築き、2002年には特定非営利活動法人HAB研究機構としてその後着実に発展を遂げ、現在に至っております。雨宮 浩初代理事長、深尾 立第二代理事長(前)理事長をはじめ、理事、監事、評議員、会員の方々のご尽力の賜物と存じます。
 1995以来、当研究機構は米国NDRIとのパートナー・シップのもと国内の研究機関に各種のヒト組織・細胞を提供し、創薬の基礎研究に貢献して参りました。創薬の基礎研究においては、標的分子の設定から、スクリーニングによるシード化合物の選定、さらに改良を重ねリード化合物の作出からスタートしますが、この過程には膨大な時間、費用、労力・人的資源を要します。現在ではヒトゲノムプロジェクトやDNAシークエンス・テクノロジーの急速な進歩、コンピューター・テクノロジーの発達によって、ゲノミクス、トランスクリプトミクス、プロテオミクス、さらにはメタボロミクス、フェノミクスに基づいたバイオインフォマティクスが導入されつつあり、今後これらの過程の大幅な迅速化、効率化が進められると予測されます(ハイスループット・スクリーニングなど)。
 他方で世界的な連携のもとでSingle Cell Analysis Program (SCAP)、Transcriptome in vivo Analysis(TIVA)が進行しており、単一細胞レベルにおけるゲノミクス、トランスクリプトミクス、プロテオミクス、メタボロミクス、フェノミクスなどの膨大なデータの集積から、健常および疾患を有する生体の遺伝子発現、蛋白局在・相互作用、代謝マップなどを含む高精度・包括的なHuman Cell Atlasの構築が進んでいます。これらが公開された暁には創薬におけるバイオインフォマティクスはさらに進化すると期待され、この領域は大きく変貌を遂げつつあると言えましょう。
 しかしこれらはあくまでコンピューター・シミュレーションであり、変動性・ノイズを避けることは不可能であると考えられます(データが膨大になればその最少化は可能としても)。またFDAガイドラインにおいては「ヒト組織を用いたin vitro試験が新薬申請に必須」であることが明記されており、いかにバイオインフォマティクスによる手法が進歩しても、ヒト細胞による確認が不可欠と考えられます(in silico と in vitro の融合)。
 これこそが当研究機構のレゾン・デートル(raison d'être)であり、当研究機構によるヒト細胞の供給の必要性は今後ますます大きくなると考えられます。ヒト細胞の入手には、手術による臓器・組織の残余組織などと、移植目的で死後に提供された臓器・組織の研究転用などがありえますが(移植以外の目的での臓器摘出とその研究への転用には法改正が必要)、前者では血管処理・摘出後の虚血傷害、後者では低温保存・凍結保存による傷害が問題となります。したがって臓器・組織の虚血抵抗性、目的・研究内容によって両者を使い分ける必要があります。前者については深尾前理事長、猪口副理事長のご尽力により実現に大きく近づきつつありますが、後者については法令の改正など課題が山積しています。今後はこれらを両面から追求してゆくことが求められると考えられます。そのためには社会に対する啓発、医学・医療者および関連分野の研究者への情報発信が、今後さらに重要となるかと存じます。したがって市民公開講座、News Letter、HAB市民新聞、種々の書籍、年次学術総会などの役割は大変重要であり、なおいっそうの充実を図りたいと考えます。
 深尾前理事長のご指導を仰ぎつつ、豊嶋、猪口両副理事長、事務局の皆様をはじめ、理事・監事・評議員の皆様、会員の皆様のご協力のもとに、当研究機構の更なる発展と創薬をはじめとした研究開発への貢献によって国民の健康と福祉の増進に、微力ながら全力を尽くす所存です。どうかよろしくお願い申し上げます。

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