年会長挨拶
学術年会開催にあたって
樋坂 章博 (学術年会長)

HAB研究機構は、貴重なヒト組織を有効にまた倫理性にも十分配慮して正しく研究に利用することで、新薬創成あるいは医療の向上に貢献することを目的としています。この過程では、ヒト組織を用いた実験結果から、何らかの基準により科学的判断を下すことが必要となります。例えば特定の臨床症状を想定した上で、それが起こるか否かをヒト組織を用いたin vitro実験から定量的に予測し、新薬候補品や医療手段の選択を決定することになります。この判断基準が正しいことは根本的に重要であり、もしこれが不正確であれば、貴重なヒト組織を有効に活かすことはできません。そこで今までに得られた知識を総動員して、この判断基準を合理的に決める必要があり、その手段こそが「モデリング」なのです。このようにモデリングは、特に医学・薬学においては実験科学と臨床を結びつける重要な役割を果たすべきものなのです。
そのような背景から、今年の学術年会のテーマを「モデリングの拓く新薬創成と新しい医療」としました。トップダウンは臨床試験の結果から判断基準を合理化する帰納的アプローチ、ボトムアップは実験事実と理論から臨床を予測する演繹的アプローチです。全体の構成は新薬を作るステップを意識しました。第一セッションでは「In silico モデリングの可能性と応用」と題して、まだ実験をしていない段階でどのように合成すべき化合物をモデリングを通じて絞り込むかをテーマとしました。第二セッションでは「非臨床研究の情報に基づくモデリング」と題して、特に薬物動態の予測を創薬の初期段階にどのように行うかを考えることにしました。第三セッションでは、「PB-PKモデルとPK-PDモデルの適用と発展」と題して臨床試験の情報が得られた段階で、どのように薬効や安全性を精密に予測するかが課題となっています。そして最後の第四セッションでは「医療と臨床試験のシミュレーション」として、患者の特性や病態を考慮して最終的な医療を最適化するモデリングをテーマにしています。

なお、3日目には例年のように広く一般市民を対象として、例年のように健康に関連する興味深い話題を提供しようと考えています。以上、組織委員の先生と知恵を絞って準備しておりますので、ぜひ沢山の方のご参加をお願い申し上げます。